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緑内障の治療

緑内障は眼の奥の視神経が障害され、 眼で見える部分が欠けていく(視野欠損)病気で日本の中途失明原因の第1位です。病気がかなり進行するまで気づきにくく、また失われた視野は治療で回復することはできないため早期発見、早期治療が大切です。

緑内障の多くはゆっくりと進行する視神経障害であり、治療できれいに治るということはありません。日本人の緑内障は多く、有病率は加齢に伴って高くなります。30年前の研究では40歳以上の5%が罹患していることが知られるようになりましたが、わが国ではそこから高齢化が進んでおり、さらに有病率は高くなっていることが推測されます。緑内障の方は通院治療を適切に行うことができれば失明などの深刻な視機能障害までいたることは多くはありませんが、一方で生涯にわたり通院や点眼などの治療の継続が必要になります。緑内障といわれて過度に失明などを恐れる必要はありませんが、自身の病気の現在の状態や今後のことなどを理解して一生にわたり適切に付き合っていくということが大切です。

当院院長である私は15年以上にわたり緑内障の専門外来、手術を担当し緑内障に対する研究等を行てきました。これまでの自身の長年の経験や知見をもとに不安を感じられている患者様が緑内障という病気を理解し受け入れて必要以上の心配をせずに過ごすことができる手助けができればと考えております。

緑内障の種類

大まかに

・原発開放隅角緑内障

・原発閉塞隅角緑内障

・続発緑内障

・小児緑内障

に分けられます。

原発開放隅角緑内障の中で眼圧が正常範囲(10~21mmHg)であるにもかかわらず緑内障になり進行していくものを正常眼圧緑内障と呼び、日本人の緑内障の7割程度を占めます。近視の方は正常眼圧緑内障を発症しやすいとされており、また強度の近視の場合は人間ドックなどでは近視性変化と緑内障の区別がつきにくいことも多くあるため、近視が強い方の場合は緑内障の精査を受けることをお勧めします。

原発閉塞隅角緑内障は隅角という眼の中の水の出口が狭くなり房水の排出が妨げられてしまうことで眼圧が上昇して緑内障が発症します。白内障手術を行うと隅角が広がるため閉塞隅角緑内障の治療目的で白内障手術を行う必要となることがあります。

薬の説明で緑内障の方の場合は医師の確認を取ってくださいと書いてあるものがたくさんありますが、これらのものの多くは隅角が狭くなる作用がみられ、もともと狭い隅角の場合は閉塞して眼圧が急激に上がり急性緑内障発作を発症することもあります。

高齢で遠視の方、特に女性は隅角が狭いことが多いため、今まで緑内障といわれたことがない場合でもそれらの薬、例えば内視鏡検査のときによく用いられるブスコパンや、睡眠薬、、抗不安薬、風邪薬、鼻炎薬などを用いる必要がある場合は一度隅角を調べておいた方が良いと思います。

非観血治療

緑内障の進行を抑えるために有効なエビデンスのある治療は眼圧を下げることのみです。正常眼圧緑内障であっても眼圧を下げることで進行を遅くすることができることがわかっています。

眼圧を下げる治療の基本は点眼治療になります。緑内障の点眼薬は眼圧を下げる機序が異なるものが数種類あり、眼圧や緑内障のタイプ、年齢や全身の状態その他を見ながら点眼の組み合わせを考えていきます。点眼の回数を増やしたり一回量を増やしてもよく効くということはなく副作用が増えるだけということもあります。

 ・点眼は1回1滴が入れば十分です。量、回数を守りましょう。

 ・点眼後はしばらく瞬きをせずに眼を閉じて目頭を軽く抑えるようにします。

 ・2種類以上の点眼をするときは5分程度は間隔をあけるようします。

また開放隅角の場合は隅角にある線維柱帯というフィルターの目詰まりを解消して房水の排出を良くするレーザー治療も適応になります。選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)は正常な組織のほとんど障害を与えず安全に日帰りで行うことができます。効果としては点眼薬1剤と同程度であり、必ず眼圧が下がるわけでも大きな眼圧下降が期待できるわけではありません。もともと点眼治療で眼圧が十分に下がらない症例に対して行われることが多かった治療ですが、近年イギリスでの研究で、点眼薬なしで最初からSLTを施行した場合の治療成績が検討され、良好な結果が公表されました。その結果を受けて2024年からイギリスでは開放隅角緑内障の治療として点眼治療の前にSLTを行うことが第一とされるようガイドラインが改訂されました。

院長の前任である国際医療福祉大学三田病院では2020年から5年間で400件以上のSLTを施行しており、豊富な経験を活かして当院でも継続して治療の選択肢として取り入れています。

緑内障手術

様々な観血的緑内障手術がありますが、いずれも見え方を良くする手術ではなく眼圧を下げるためのものであり、他の安全な手段で済むのであれば手術をしない方が良いのは確かです。しかし失った視機能を回復することができないからこそ先を見て、眼が見えるうちに手術で悪化するのを食い止めるよう努力することが必要になることがあります。患者様の眼の状態、全身状態によって手術の必要性、手術の種類などを提案し、相談の上で手術を決定させていただきます。

緑内障手術は眼科手術の中でも術後の調整など手間がかかり日帰り手術を行っている施設はまだ多くありませんが、当院は日帰りでの緑内障手術にも対応しています。ただ、残された視機能や全身状態などによって入院での手術が必要なこともありますので、その場合は院長が信頼を置く入院手術ができる病院を紹介させていただきます。

緑内障手術は

線維柱帯からの房水流出の抵抗を減弱して排出量を増やす方法(流出路再建術)

房水を線維柱帯を通さず白目(強膜)を通して眼球の外に流すバイパスを作り、白目の表面の薄い粘膜(結膜)の下に濾過胞(水袋)を作る方法

に主に分けられます。

流出路再建術

線維柱帯の目詰まりが原因で眼圧が上昇しているとして線維柱帯を切り開いたり(線維柱帯切開術)、チタン製のステントを入れたり(i-stent)することでその抵抗を減らします。

この術式の最大の利点は大きな合併症がまれであり永続的な視機能障害がほとんどないことです。一方で眼圧下降効果はあまり強くなく、線維柱帯より先の排出路(シュレム管)の機能が低下していると眼圧が下がらないこともあります。また量の多少はあれ必ず眼内に出血するため術後しばらくは見えにくさがでますが、大部分は自然に消退します。

線維柱帯切開術は昔からの結膜と強膜を切開してシュレム管ごと切る眼外法と結膜を切らず黒目(角膜)の小さな傷口から眼内に入り眼内からフックや糸を用いて線維柱帯を切る眼内法があり、とくに眼内法はより眼の負担が少なく低侵襲緑内障手術(MIGS)と呼ばれ近年は手術件数が全国的に増えています。近年は眼内法が大部分ですが当院は眼外法にも対応可能です。

濾過手術

濾過手術の中でも線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)は緑内障手術の中で最も一般的であり、眼圧を大きく下げる必要があるすべての緑内障の病型が適応になります。バイパスを作っても体が傷を閉じようとする反応で塞がってしまうこともあり、症例ごとに経過が異なってくるため術後に様々な処置や小手術による眼圧や濾過胞を維持するためのメンテナンスが必要になることがあります。流出路再建術に比べて眼圧が良く下がることが多い反面、合併症として濾過胞に細菌が感染して失明に近いような状態になることが術後数年しても起こるリスクがあるのが欠点です。流出路再建術に比べるとハイリスクハイリターンの手術ですが、濾過手術以外では眼圧が下がらず救えない眼もあります。

濾過手術の中でも目の状態によってはエクスプレスというステンレス製の小さなパイプを使う手術を行うこともあります。トラベクレクトミーに比べると合併症が少ないといわれますが、症例の適応はトラベクレクトミーより限定されます。

2023年秋に新しい濾過手術の方法としてプリザーフロマイクロシャント手術が日本でも一般に行えるようになりました。トラベクレクトミーのように強膜に穴をあける代わりにSIBSといわれる柔らかい素材で作った全長8.5mmのチューブを強膜から前房の中まで挿入してそこから房水が排出されることで濾過胞が形成されます。

新聞等のメディアで新しい緑内障手術としてしばしば取り上げられていたため目にしたことがある方もいるかと思います。

この手術はトラベクレクトミーに比べると術中の侵襲が少なく術後のメンテナンスも少なくて済むので術中術後の患者様のストレスが少なく済むというのが特徴です。

ただ残念ながらヨーロッパの先行した使用成績からは従来のトラベクレクトミーに比べると眼圧下降効果が劣る結果となっており、トラベクレクトミーにすべて代わるものではありません。

患者様の状態によってどの手術が望ましいかは変わってくるためしっかり相談しながら術式を考えさせていただきます。

 

なおすべての手術に言えることですが一度の手術で一生にわたり眼圧下降効果が続いてくれる場合もあるものの、手術であけた穴が閉じたり十分に下がらずに再手術が必要になることはあり得ます。どんな熟練した医師が手術を執刀しても濾過手術は必ずしも想定通りの経過になるとは言えません。将来的な再手術も含めて考えて治療方針を検討する必要があります。

 

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